まーしーのロンドン大医学部生活

University College London医学部6年生のロンドン生活、医学部での経験をお伝えします!(内容は個人の見解に基づくものであり、所属組織・その他団体と一切関係ありません)

チャリティー団体 SKIP ~低・中所得国の子どもの福祉プロジェクト~

私が医学部の学習と並行して行っている課外活動を、これから少しずつ紹介していきます!

それぞれの活動の意義や活動から得る学びを振り返ることで、今後の私の活動の方向性を考える機会にもしたいと思います。

 

まずは、私が大学1年の時から彼是3年以上続けている、学生主導のチャリティー団体での活動です。

イギリスでは非営利団体(チャリティー団体)の活動が本当に盛んで、Students for Kids International Projects (通称:SKIP)と呼ばれるこの団体もイングランドスコットランドのチャリティーとして登録されています。

 

Sustainable - Inclusive - Empowering #WeAreSKIP #SKIP2019 #SKIPHYPE #GlobalHealthIs

SKIP - Students for Kids International Projectsさんの投稿 2019年11月9日土曜日

 

活動目的・団体構造

団体のミッション
  1. 世界中の子どもたちとコミュニティを支援し、基本的な健康・福祉・教育の権利を守る
  2. コミュニティに根差した持続可能なプロジェクトの立案・継続を通して、将来変化を起こせる人材を育成する

と大きく分けて2つのミッションを掲げています。

もう少し具体的に活動内容を説明すると、大学支部がそれぞれ選んだ国で子どもの健康改善を目的としたプロジェクトを立ち上げ、毎年夏に学生ボランティアを現地へ派遣しています。

ボランティアを派遣できるのは夏のみであること、またミッションとしてプロジェクトの持続可能性を掲げていることから、現地のニーズに即したプロジェクトを現地NGOと一緒に立ち上げ、最終的にはSKIPの介入なしにプロジェクトが継続できる仕組みを作り上げることをゴールとしています。  

大学支部

大学支部はそれぞれ、

  1. プロジェクトを行う国の選定
  2. 国内の子どもの福祉に関するニーズ把握
  3. 現地NGOの選定
  4. プロジェクト立案
  5. プロジェクトの継続、成果のモニタリング
  6. プロジェクトゴールを達成したら、NGOと相談しつつ撤退

というサイクルの中で活動しています。

SKIPの大学支部は現在イギリス国内に12個あり、年2回の全体カンファレンス、年1度の年次総会で他の支部のメンバーと交流することができます。

National Committee, Trustees

支部レベルの経験を積むと、全国の支部をまとめるNational Committeeとして、支部のマネジメントやチャリティとしてのイベントの運営に携わることもできます。

さらに、社会人から構成されているTrustees(評議員会)が活動報告やより高いレベルでのアドバイスを行っています。

 

私がSKIPに加入した理由

もともと途上国医療に携わりたかったので、夏休みを利用した保健分野のフィールドワークを入学前から検討していました。

インターネットで検索して学生ボランティアの斡旋業者をいくつか見つけましたが、業者に支払う参加費がとても高い点や、一回きりの参加で継続性がない点に違和感を覚えました。

対してSKIPは、

  1. コミュニティのニーズを掴むための事前リサーチや現地調査を重視しており
  2. プロジェクト参加だけでなく、現地団体と協力してプロジェクトを立案するという実戦的な経験が積め
  3. 学生主導のチャリティなので組織運営にも携われる

といった魅力がありました。

 

今までの私の活動

私の大学(UCL)の支部での活動

大学1年生ではResearch&Developmentの担当として、2~3年生ではプロジェクトリーダーとして、UCL支部の活動を率いていました。

Come say hi at the RUMS Freshers Fair ! Happening 24 Sep 2019, 5.30pm to 7.00pm.

SKIP UCLさんの投稿 2019年9月24日火曜日

日本ではあまり聞かない名前かもしれませんが、UCL支部は、西アフリカにあるガンビアという小さい国でプロジェクトを行っています。

Pakalindingという小さな村で、母子保健・栄養に特化したプロジェクトを立案しました。

私自身ガンビアにはこれまで2回、それぞれ3週間ずつ行ったのですが、その時の体験についてまた今度詳しく書きたいと思います!

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↑グループメンバーで”SKIP”を文字ったポーズ!日陰がないので、容赦ない直射日光を浴びて過ごしていました…。

また、プロジェクト経費を集め、活動メンバーを増やす目的で、国際保健に関する講演会や募金活動も行っていました。

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支部リーダーとして、全国集会で支部の活動内容をプレゼンしました。

National Committeeでの活動

大学4年生の今年度は、初めてNational Committeeに加入して、イベントや定例ミーティングの開催を担うSecretary(書記、事務)を務めています。

www.skipkids.org.uk

そして、つい先週来年度のNational Committeeのメンバーを選出する年次総会がオンラインで開催され、私は希望していたTreasurer(財務管理)のポジションに就けることになりました!

 

SKIPのメンバーは本当に素敵な人が多く団体の雰囲気がとても心地よいので、 来年以降も関われることを嬉しく思います!

学術ジャーナルに初掲載!

私は今まで学会誌や医学雑誌に投稿する経験がなかったのですが、先日初めて「会員の声」として国際保健に関する学会誌に投稿した文章が採択されました!

 

投稿のきっかけとなったシンポジウム

昨年11月に開催された、グローバルヘルス合同大会 2020 大阪の学生シンポジウムで、パネリストの一人として登壇する機会をいただきました。

元々は大会名の通り大阪で開催される予定でしたが、昨年はオンライン開催となったので、私もロンドンから参加できました!

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シンポジウム前半では、3か国の医学生パンデミックにどのように対応したかをそれぞれ発表し、後半には全体のパネルディスカッションや質疑応答を行いました。

日本の医学生の方の発表から、病院実習が中止された分の時間を有効活用して、

  • 医療アプリを開発したり
  • 医学生の感染予防についての知識を向上させたり
  • 厚労省の調査に関わったり

と、出来ることに注力していたお話を伺い「すごいな~」と感心してばかりでした。

イギリスの医学生が病院内外で行ったボランティア活動について発表したところ、日本の大学教授の先生が興味を持ってくださったので、投稿してみようと思い立ちました。

 

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↑学生シンポジウムの様子です。イギリス午前4時前から参加したので、私だけ背景が暗いですね…笑

 

投稿の狙い

パンデミックを受けてイギリスの医学生が医療現場で働いていたことは、日本でも報道されていましたが、医療現場の逼迫を強調する意味合いが強かった気がします。

しかし、病院内での活動をするために、医学部や病院がどうやって医学生を募集したか、またどのようなサポートを提供したかについてはあまり知られていないと感じていました。

また、病院外でのボランティア活動、例えば

  • 医療従事者の生活のサポート(子守、買い物代行)
  • 医療情報の複数言語への翻訳
  • 世界中の学生団体との連携

といったことには、焦点が当たらなかったと思います。

そのため、日英の学生の反応の違いや大学が果たせる役割について、文章にまとめて日本語で発信することは有意義だと考えました。

 

日本国際保健医療学会での口演

その後、今回のレター投稿の内容や、医学生メンタルヘルス支援について、2月頭と3月頭に日本国際保健医療学会の地方会で口演の機会をいただきました。

学会発表は初めての経験で、質疑応答でどんな質問がされるかドキドキしていましたが、2回とも上手く行ったのではないかと思います!

1週間ほど前には、私の学会発表を聞いてくださった1人の医科大学の教授の先生が、日本の医学生との交流セッションを企画してくださったので、学会口演の時とは異なる視点からフィードバックをいただけました。

 

読んでいただけると嬉しいです!

シンポジウムの座長さんにたくさん助けていただきながら書き上げた原稿が、実際に学会誌に掲載されると思うと達成感を感じます!

短い文章ですので、以下のリンクから是非ご一読ください。

 

www.jstage.jst.go.jp

 

ロックダウン中のイギリスの最近の様子

ロンドンは、3月になって日が長くなってきました!

年末年始は午後3時には薄暗くなっていましたが、今は午後5時半頃まで明るいですし、少しでも日中に晴れ間がのぞく日が増えてきました。

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↑雲一つない青空だった日。といってもこの約2時間後には曇って雨が降っていましたが…。

 

COVID-19の蔓延状況

感染者数

変異株が急速に蔓延した1月頭には、週平均の1日の感染者数が6万人を超えることもあり、新規感染者数・死者数ともに世界ワースト1位だったイギリスですが、現在は6千人台まで1日の新規感染者数が減りました。

私の実習先の病院では、ピーク時に緊急治療室で病床数のおよそ3倍の患者さんを受け入れていましたが、現在は病床数程度まで減ってきたと聞いています。

ワクチン接種

イギリス政府がかなり力を入れてワクチン接種を進めているので、これまでにイギリス国民の38%(約2400万人)が1度目の接種を、2.5%(約150万人)が2回目の接種を終えています。

Pfizer, AstraZeneca, Modernaの3社のワクチンを提供していますが、どれが当たるかは接種時までわからないようです。

医学生は医療従事者と同じく優先的にワクチンを接種できたので、私も1月中旬に1回目のPfizerのワクチンを実習先の病院で受けました。

Pfizer社は、1回目の2~3週後に2回目を接種するよう推奨していますが、イギリスではなるべく多くの人にワクチンを行き渡らせるために、2回目の接種は1回目の約10週間後になっています。

そんなに時間を空けて大丈夫なのかと心配していましたが、先日イスラエルで行われた研究で「Pfizerのワクチンを1回打っただけで85%の効果が得られる」と発表されたので、少し安堵しました。

 

ロックダウン段階解除のスケジュール

イギリスでは年始から全土のロックダウン措置が敷かれていますが、6月までに段階的に解除されていくと先月末発表されました。

  • 3月上旬:学校再開、別世帯の1人と屋外で会える
  • 3月末:屋外スポーツの再開、6人以内または2世帯で屋外で集まれる
  • 4月中旬:美容院・小売店・公共施設の再開、レストランの屋外営業再開
  • 5月中旬:レストランの屋内営業再開、1000人以内の屋内イベント・4000人以内の屋外イベントの再開
  • 6月下旬:完全解除

といったスケジュールがイギリス政府によって示されました。

9月に新学年が始まってから学生団体の活動がすべてオンラインで行われているので、早ければあと1か月後から、一緒に活動しているメンバーとご飯に行けることが楽しみです!!

実習に行く以外あまり外出していないので、久しぶりにロンドンの中心街で気晴らししたいなとも思います。

ただ、ワクチン接種が予定通り進まなかったり、新しい変異株が流行したり、入院患者数や感染者数が急増したりすると、このスケジュールより解除が遅れてしまうので、まだまだ油断禁物です。

 

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 ↑生活必需品を扱うお店以外は現在閉まっています。文房具屋さんの装飾が、いまだに12月初旬のクリスマスセールのままです。

 

街の様子

天気が良くなってきたうえにロックダウンの終わりが待ちきれないからか、(屋外での接触がまだ許されていなかった)先月末の土日には広い公園でピクニックを楽しむ人が多かったようです。

www.standard.co.uk

イギリスでは屋外でマスクをしている人が少ないので、感染が再拡大しないよう祈るばかりです…!

医学生としてコロナ対応のお手伝い ⑤実際に参加して

イギリスのCOVID-19感染者数は大分落ち着いてきたものの、私の実習先の病院ではまだまだ患者さんを多く受け入れているので、医学生も実習の合間を縫ってお手伝いに参加しています。

今回は、緊急治療室(ICU)でのコロナ対応のお手伝いに医学生として参加して、私が大変だと感じたこと、やりがいがあったことを書き留めておきます。

 

大変だったこと

長時間のマスク&立ち仕事

慣れない活動内容だったためにさらに大変に感じたのかもしれませんが、N95マスクを身につけて立ちっぱなしの12時間シフトはやはり疲れました。笑

マスクのゴムやフェイスシールドのゴムが頭にずっとついているので、夜には酸欠のような頭痛を少し感じましたし、足もパンパンでした。

指示の聞き取り

おそらく初めて聞く薬や器具の名前がいくつかあり、看護師さんにマスク越しに早口で言われると聞き取るのが大変でした。

また、同じ薬でも錠剤によって量が違うことがあるので、聞きなれない薬の名前と必要量を覚えて倉庫で見つけることが、慣れるまで大変でした。

私の中途半端な理解で薬の種類や量を間違ってしまっては大変なので、その場で聞き返したり処方前に再度確認をお願いしたりして、コミュニケーションのミスがないように努めていました。

患者さんの家族との対面

緊急治療室ではかなり容態の悪い患者さんを受け入れているので、最期が近いであろう患者さんの家族がマスクやガウンを身に着けて対面に来ている場面に遭遇しました。

私は、各シフトで担当する患者さんのバイタルや血液検査の数値ばかりに注意を払っていましたが、(当たり前ですが)ひとりひとりに家族やこれまでの人生があることを考えると、いきなり生活を一変させてしまう感染症はやはり怖いなと思いました。

 

やってよかったと感じたこと

新しいスキルの習得

最初は簡単なバイタルの確認でさえ手間取っていましたが、分からないことを質問すると看護師さんや医師の先生がとても丁寧に一から教えてくれたので、新しいことを吸収できました。

緊急治療専門の医師の先生が、超音波を使いながら点滴の管を入れていた際、その過程1つ1つを説明していただきながら間近で見学でき、超音波で動脈と静脈がどのように違って見えるかがよく分かりました。

また、医学部の勉強では処置の指示の出し方を学びますが、実際に挿管したり薬を準備したりする機会は今まであまりなかったので、患者さんの治療に直接関わるとはどういうことか身をもって体験できました。

医学生として貢献できるやりがい

「臨床実習を開始したばかりの医学生なので、たくさん質問してしまうと思いますがよろしくお願いします」と伝えると、どのスタッフの方も「実習もあるのにお手伝いに来てくれてありがとう!どんなことでも助かる」と返してくださり、まだまだ未熟な私でも微力ながら貢献できることが嬉しかったです。 

担当するタスクに慣れ、その日の患者さんの容態が掴めるようになると、少しずつ色々なタスクを任せてもらえるようになり、とてもやりがいがありました。

 

余談:最近の実習の様子

先月から少しずつ臨床手技の対面セッションを再開しています!

今月の頭には、実習先の病院にあるClinical skill centreで、今までオンライン授業で扱った内容を模型を使って練習したり、学生同士採血しあったりする日があり、よい復習になりました。

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↑私が今年一緒に実習している友達です!うまくカニューレ挿管できました!

医学生としてコロナ対応のお手伝い ④緊急治療室での1日

学会発表の準備やインターン、実習に追われていて少し更新が開いてしまいました…。

 

ロンドンではかなり新型コロナの患者数が減ってきています!!

それでも私の実習先の病院ではまだ通常のキャパシティ以上の患者数をICUで受け入れているので、医学生のコロナ対応のお手伝いは続いています。

足の怪我がほぼ治ったので、立ち仕事が長い緊急治療室(ICU)でのコロナ対応に先月から何度か参加しています。

朝から夜まで丸1日のシフトを行った際の体験を共有したいと思います。

 

1日のスケジュール

朝7時半から夜8時までの12時間半のシフトで、その間に交代で30分の休憩が3回ありました。

朝まだ薄暗い中病院に向かい、勤務が終わったら真っ暗だったので、(ロンドンでは珍しく)ずっと晴れていた日だったらしいのですが笑、日の光を浴びることなく1日が終わりました。

緊急治療室スタッフ専用の休憩室では、飲み物・お菓子・軽食が用意されていたので、私もサンドイッチやお菓子をいただきながら乗り切りました。

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医学生はどんな仕事を担当するの?

担当する仕事内容は患者さんの容態や周りのスタッフの数に左右されるのですが、今まで私が主に担当していたタスクを紹介します。

バイタルの記録

患者さんの脈拍、血圧、体温、尿量、呼吸器の設定等のたくさんの項目をを1時間ごとに記録しなければいけません。

また、数時間おきに追加の検査(例:血液ガス)も行う必要があります。

そのため、複数人の患者さんを1人で診ていると、全員の患者さんの数値を記録し終わるとほぼ1時間経過していることもあります。

毎時の数値を重視するというより、折れ線グラフで記録して数値の推移を掴みます。

体位変換

ずっと同じ体勢でベッドで横になっていると床擦れが起こってしまうので、定期的にベッド上での位置を動かします。

ICUの患者さんに繋がれているたくさんのチューブやモニターのケーブルが取れないよう、慎重に行います。

重症化する患者さんはかなり体重があることが多いので、複数スタッフで"Ready, steady, go"と合図に合わせて動かします。

体を持ち上げたタイミングでベッドシーツの交換や簡単な掃除もします。

薬の準備

医学生は薬を処方することはできませんが、指示に従って薬を倉庫に取りに行ったり、薬を液体に溶かし用意したりすることはできます。

また、ベッドの横にあるトロリーに必要な医療器具が揃っているか頻繁に確認して適宜補充して、看護師さんが薬を投与しやすいように補助しています。

口腔ケア、スキンケア

濡らした綿で口の中を綺麗にしたり、顔をふき取り剤で拭いたりする程度なのですが、新たな感染を防ぐためにも、顔周りは常に清潔に保ちます。

 

どのタスクでも、患者さんの尊厳を守る

緊急治療室には意識がない患者さんも多いのですが、意識の有無にかかわらず、看護師さんが、いつも患者さんの名前を呼んで処置を説明し、優しい言葉をかけていたのがとても印象的でした。

また、たとえば衣服を交換したり排泄のケアをしたりする際は、患者さん自身や周りの患者さんが全員意識がなかったとしても、必ずベッド周りのカーテンを閉め、露出を最小限に抑えていました。

”患者さん一人一人を尊重し尊厳を守りなさい”と、特に医学コミュニケーションや緩和医療の授業で何度も言われてきましたが、実際に行動に移す機会は今まであまりありませんでした。

緊急治療のような厳しい環境でも患者さんへの配慮が自然とできるように、常日頃から意識していきたいです。

 

次回は、コロナ対応に参加した感想を詳しく書こうと思っています。

どうしてUCLの医学部を選んだの? ⑤大学選びで見逃していたこと

今まで、医学部のカリキュラムや学費・学習環境という観点から、私が出願大学を選んだ際に重視していたポイントを紹介してきましたが、今回は、私が今振り返って「比較すればよかったなあ」と感じるポイントについて書きたいと思います。

 

大学の所在地

所在地については生活費や物価にばかり焦点を当てていたのですが、大学がある都市についてより詳しく調べれば良かったと感じています。

 

交通

まず、大学生活を送るうえで専攻に関係なく、交通・移動手段は大切です。

ロンドンはバス・地下鉄・電車が張り巡らされているので、車がなくても全く問題なく移動できます。

特にロンドン中心部に行く場合は、車で行くと駐車場所が難しいうえに道路使用料金がかかるので、公共交通機関の方が移動が楽です。

地方都市の医学部に通っている友人によると、少し遠い病院に実習に行く際に車がないと不便なので、運転免許を取得し車を手配する学生が多いようです。

 

 実習で診る疾患の幅広さ

ロンドンは、イギリスの中でも特に様々な人種が共存する都市です。

私も時々「イギリス生まれロンドン育ちの日本人なの?」と聞かれることがありますし、電車の1車両をとってもヨーロッパ系、アフリカ系、東アジア系、中東系、中央アジア系、ラテン系等様々な人種が混在しています。

入学する前は考えが及びませんでしたが、住んでいる人種が多様ということは、病院で診る患者さんの人種やバックグラウンド、またそれぞれが罹りやすい病気も様々だということです。

人種によって、Differential diagnosis(鑑別診断:可能性のある病気を挙げること)が変わったり、(例えば高血圧の治療で)治療薬の処方の順番が変わったりします。

また、英語がうまく話せない患者さんのために通訳を手配したり、(英語が堪能な)患者さんの家族を介して問診をしたりすることもあります。

患者さんと一対一でコミュニケーションが取れないときは、ニュアンスが途中で変わってしまっていないか、(家族が通訳する場合は)家族の意思が混じってしまっていないか注意しなければいけません。

言語・人種・職業等の差が医療の質の差につながってしまってはいけないので、低学年のうちから、医療で起こりやすいmicroaggression(自覚なき差別)を防ぐ方法を考える講義があります。

自分と異なる点が多い患者さんと話す機会がたくさんあるので、色々な物事の考え方に触れつつ最善のケアを考えたり、信頼関係を構築できるようなコミュニケーションを目指したりと、将来国際医療にかかわるうえで生きるであろう経験を積めていると感じます。

 

課外活動

医学生カンファレンスや著名な先生のご講演に土日や平日の夕方を利用して参加しようと思ったとき、ロンドンには複数医学部が集まっているのでイベントの頻度が高く内容も幅広いです。

また、複数の大学の学生団体が共同開催するイベントは、特に質が高いと感じます。

課外活動を通してほかの大学・学年の学生とたくさん交流できることも、都市部の大学に通うメリットだと思います。

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天候 

イギリスは雨が多いイメージをお持ちの方も多いと思います。

実際ロンドンでは、一日中雨が降っていることは少ないものの、ずっとどんよりしている日が特に秋~冬に多いです。

冬は日照時間も短いので、9時~17時に講義が詰まっていると日光を浴びることなく一日が過ぎてしまうことがあり、特に渡英したての冬は日光に飢えていました…!

イギリスの中でも特にウェールズでは雨の日が多いと聞くので、慣れるまではなかなか辛そうです。

 

大学の試験

きちんとした成績を修めて進級していくためには、どんな試験をパスしないといけないのか熟知する必要があります。

 

定期試験の頻度・形態

私は入学するまで知らなかったのですが、UCLの医学部では試験が年に1度しかありません。

つまり、1年間かけて勉強した範囲すべてが学年末試験の範囲となります。試験形態は、実技試験と選択式の筆記試験です。

試験の頻度や形態は大学によって様々で、例えば同じロンドン大学の傘下のインペリアル・カレッジ・ロンドンの医学部では、単元ごとに記述を含む筆記試験があり、別日に実技試験があるそうです。

範囲は広いけれど試験回数が少ない方が良いのか、常に試験に追われる状態だけれど各試験の負担が少ない方が良いのかは、完全に個人によると思います。

正直なところ、私は小さい試験が何度もある方が良かったです。笑

 

医学部卒業試験の時期

イギリスでは現在国家試験はなく、医学部卒業と同時に医師免許が付与されます。

この大学の卒業試験も大学によって実施時期が異なり、UCLのように6年生の春に行う大学もあれば、卒業の1年以上前に実施し最終学年をひたすら研修に充てる大学もあります。

 

 最後に

UCLに入学してロンドンで暮らしてみて初めて大変さに気づいたこともありましたが(日照時間の短さと学年末試験の範囲の広さ。笑)、徐々に慣れながら勉強したいことに打ち込めているので、とても充実している日々です!

 

 

救急のシミュレーション&血液ガスの採血

私は今学期のモジュールで、呼吸器内科、循環器内科、内分泌代謝内科、救急外来での実習を行っています。

先日その一環として、実践的なスキルを身に着けるために、救急のシミュレーションと血液ガス分析用の採血の練習を行いました。

 

救急のシミュレーション

私の実習先の病院には、Simulation centreといって救急外来の様子を再現できる研修施設があります。

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患者さんのマネキン、先生が操作できるバイタルのモニター、実際に現場でも使われている医療器具、除細動器(心室細動による心停止の際に電気ショックを与える機械)などが用意されています。

また、別室にいる先生の声がアナウンスとして聞こえる仕組みになっています。

最初患者さんの容体が安定している時は、患者さんに扮した先生から主訴や症状の詳細を聞き出し、そして容体が急変して私たちだけでは対処できなくなった場合には、専門医に扮した先生に電話越しで状況を伝え指示を仰ぎます。

 

ABCDE assessment

これは、初めて患者さんを診る場合に必ず行う体系的な診察のことです。

救急外来というストレスフルな状況でも、緊急性の高い症状を見落とすことがないように、以下の順番に確認していきます。

  • A: airway =気道閉塞
  • B: breathing = 呼吸器系
  • C: cardiac/circulation = 循環器系
  • D: disability = 意識障害
  • E: exposure = 全身の変化(出血、発疹、浮腫など)

それぞれのセクションにおいて、

  1. 目で見て、手で感じて(触診)、耳で聞いて(聴診)異常を見つけ、
  2. 心拍数や酸素飽和度といったバイタルを測り、
  3. その場で行える治療(酸素吸入、点滴など)を行い、
  4. 心電図、血液検査、X線など必要な検査の指示を出す

ことが求められています。

 

チームワーク、コミュニケーションの大切さ

このシミュレーション施設で3つほどケースを体験して感じたことは、スタッフ間でのチームワークとコミュニケーションが患者さんの予後に大きく影響するということです。

例えば、救急の現場では複数の医師や看護師が協力して治療にあたることが多いので、上記のABCDE assessmentを分担して行ったり、周りのスタッフに治療や検査の指示を出したりします。

このような状況では、だれが何を担当するのか名前を呼びあって確認しないと、せっかく出した指示がうまく伝わりません。

その結果、迅速に治療が行えなかったり、ベッドサイドでの検査が遅れて患者さんの状態を正確に確認できなかったりします。

また、専門医の先生に指示を仰ぐ場合、患者さんにまつわる必要な状況を簡潔に伝え、分からない点を明確に質問する必要があります。

  • S: situation(患者さんの年齢、性別、主訴、病院内での場所)
  • B: background(詳しい状況、病歴)
  • A: assessment(バイタルの状況、簡単な診察の結果、既に行った処置)
  • R: recommendation(これからの対応についての私の考え、質問)

という順番で伝えるようにするのですが、焦っていると頭の中で情報を取捨選択して整理することが難しいので、場数を踏んで慣れていきたいと思います。

 

血液ガスの採血の練習

ABG(Arterial blood gas:血液ガス)分析は、酸素や二酸化炭素といった血液中の気体の濃度を測り、血液のpHが酸性やアルカリ性に傾いていないか確認する検査です。

静脈からの採血はすでに練習したのですが、血液ガス分析では動脈から採血しなければいけないので、手順や使用する器具が違います。

実習先の病院にある臨床手技研究施設で、マネキンを使って練習しました。

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 ↑左下の青いポンプをリズムよく握ることで、脈拍を再現できます!血液はもちろん色水ですが、使用する器具はすべて本物です。

同級生とペアになって、

  1. 処置に関する説明を行い患者さんから同意を得て、
  2. 局所麻酔を行って、
  3. 採血をして、
  4. 使用した針を安全に処分し片づけをする

といった一連の流れを練習をします。

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 ↑Radial pulse(手首の脈拍)を確認して、今まさに針を刺そうとしているところです!

 

最後に

診察にしても臨床手技にしてもまだまだ慣れないことが多いのですが、足りないところを自覚して同じ間違いを繰り返さないようにしたり、新しい手技を積極的に練習したりして、ちょっとずつ成長出来たらなと思います!