まーしーのロンドン大医学部生活

University College London医学部6年生のロンドン生活、医学部での経験をお伝えします!(内容は個人の見解に基づくものであり、所属組織・その他団体と一切関係ありません)

楽しかった小児科実習② 新生児病棟

前回は小児科実習中の外来診療(小児科サブスペシャリティの外来診察と小児救急)での実習についてお伝えしたので、今回は可愛い赤ちゃんに囲まれた新生児病棟での実習の様子をまとめます。

 

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↑先日通りかかったとても可愛い子ども服屋さん!私も母になったらここの洋服を着せてあげたいです…

 

Neonatal Intensive Care Unit (新生児集中治療室)

NICUでは、低体重、心臓の先天性疾患などがある赤ちゃんが人工呼吸や栄養補助を受けていました。

毎朝引継ぎのあと病棟回診に参加し、

  • 1時間ごとのバイタルが記録された大きい表を見ながらその日のマネジメントの方針を話し合ったり
  • 先生の診察結果や前日の検査結果をカルテに書き込んだり

と、医師の先生の補助を行いました。

 

Special Care Baby Unit

本来SCBUは、NICUに入るほどではない程度の疾患を持つ赤ちゃんが入院する病棟ですが、私が実習をした際は、特に早産・難産ではなかった生まれたての赤ちゃんとご両親が過ごしていました。

ここでは、生後72時間以内に1回+生後6週間に1回と合計2回すべての赤ちゃんに行う、Neonatal and infant physical examination (NIPE)という、一通りの身体診察を何度も練習しました。

赤ちゃんの様子や肌の色(血液の灌流や黄疸の有無)を確認した後、頭からつま先に向かって順に診察していくのですが、赤ちゃんが落ち着いている時を狙って心音を聴いたり鼠径部の脈拍を測ったりしなければいけなかったので、自分のペースで進められないことが難しいと思いました。

まだ生まれてから丸1日も経っていない赤ちゃんに初めて会ったので、モロ反射を確認するときや、背中を見るために赤ちゃんをひっくり返すときはとても緊張しました。

↑モロ反射の確かめ方を見て不安になる親御さんもいるので、必ず事前に「両手が対称的に開く=神経の発達に異常がないことを確認するために行っている」と説明します。

 

赤ちゃんが診察中に泣き出してしまったときは、空いている手の小指を吸わせて落ち着かせました。

小さい体で頑張って私の指を吸っている姿が本当に可愛かったです!!!

具合があまり優れない赤ちゃんがいた場合は、血中ビリルビン値(これが高いと黄疸が出ます)を測るための踵からの採血、腹部X線のオーダーなど、先生の監督の下様々な経験を積めました。

 

赤ちゃんが生まれる瞬間

新生児病棟の先生の中には、分娩室からの救急要請担当の先生がいます。

その先生と一緒に難産の帝王切開に立ち会って、初めてお産を見ました。

お母さんの出血量がひどく、赤ちゃんも子宮から出た後すぐに泣かなかったのでピリピリとした雰囲気でしたが、新生児用ヒーターを使って体を温めながら人工呼吸を行い、体をタオルでしっかり乾かすと泣き声を上げたので、立ち会った全員が安堵しました。

お母さんのお腹の中から出てきた赤ちゃんが、自力で呼吸して一人の人間として育っていくというのは、本当に不思議で神秘的だなと思います。

産婦人科の実習でより多くのお産に立ち会えることが楽しみです!

 

日本との違い

この記事を書いていて、日本とイギリスの新生児治療の違いに2つ気づきました。

1つ目は、日本の新生児治療において、NICUで状態が安定した患者さんはGrowing Care Unit (GCU)と呼ばれる回復期病棟に入るため、SCBUは存在しなさそうだということです。(インターネットで見つかりませんでした)

2つ目は、同じNICUという名称でも、日本では「エヌアイシーユー」、イギリスでは「ニクー」と読み方が異なるということです。

ちなみにイギリスでは、SCBUは「スクブー」、PICU(小児集中治療室)は「ピクー」、NIPEは「ナイピー」と読みます。

略称を初めて聞いたときは、何を指しているのかなかなか理解できませんでした。笑