まーしーのロンドン大医学部生活

University College London医学部6年生のロンドン生活、医学部での経験をお伝えします!(内容は個人の見解に基づくものであり、所属組織・その他団体と一切関係ありません)

がん治療科での実習

9月に5年生の実習が始まって、私は最初にがん治療科を回りました。

元々3年生の時に免疫学について学びながら肺がん組織に関する研究に関わっていたので、今年は臨床現場からこの分野に触れられることにわくわくしていました!

私が今年実習を行っている病院にはがん治療科専門の医師で学生指導を担当されている先生がいらっしゃらないので、1日乳がんの外来に参加した以外はオンライン授業もしくは自習だったのが残念でしたが、感じたことをまとめたいと思います。

今回は、真面目な医学部での学びに関する記事です!

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↑記事の内容とは関係ないですが、有名なピカデリーサーカスのエロス像。今週ロンドンは一気に寒くなり、天気も悪くなりました。

 

病院実習での学び

がん患者さんは化学療法で体の免疫機能が下がっているため、感染症にかかった際の重症化リスクが高いです。

そのため、3日前にPCR検査をおこなって陰性を確認してから実習に臨みました。

コロナの影響で、4年次にあるはずだったがん患者さんとの対話セッションが全て中止されてしまっていたので、今回初めてがん患者さんとお話しました。

乳がんの外来診療に参加して、患者さんとのコミュニケーションが非常に大切だなと感じました。

  1. がんが大きい場合は、まず化学療法でがんを小さくし、
  2. 手術で、胸のしこり、もしくは乳房、脇のリンパ節を取り除き、
  3. その後放射線療法、化学療法、ホルモン療法などで再発を防止する

といったように順に進めるのですが、私が参加した外来では、最近乳がんと診断された患者さんが今後の治療計画の説明を受けた際に「抗がん剤治療は辛そうで嫌だから、化学療法の途中で手術を受けたい」と先生にお願いしていました。

そこで先生が、

  • 手術前の化学療法は、出来るだけ通常の組織を残しつつ、がんを残さず切り取るために必要だということ
  • 血液中に流れ出たがん細胞から起こる再発を防止する役割もあること

といった内容を、紙に図を描きながら分かりやすく説明し、患者さんご自身が化学療法を最後まで終わらせてから手術を受けるメリットを理解できるようにしていました。

また、実習中には、別の患者さんを1対1で問診する機会もありました。

化学療法による食欲不振や吐き気に悩まされながらも、暮らしの中で小さな幸せを見つけて、長くなるであろうがん治療に前向きに取り組んでいらっしゃる姿に勇気づけられました。

 

オンライン授業+自習

オンライン授業では、肺がん、大腸がん、前立腺がんなどについて知識を得たり、外来実習で問診した患者さんの病歴や治療方針についてプレゼンしたりしました。

研修医になった際に特に知っておかないといけないことは、がん患者さんへの緊急時対応(例えば、免疫低下による敗血症、がんの転移による脊椎圧迫、上大静脈症候群など)なので、それぞれの兆候や検査・治療の順序についても学びました。

 

最後に

高齢化が進んだ現代、2人に1人は何かしらのがんになると言われています。

先進国だけでなく、低中所得国でもどんどん患者さんが増えてきていて、早期発見・早期治療のニーズは今後世界中で高まっていくでしょう。

がん治療医の仕事は、大変なことも多いと思います。

患者さんやご家族だけでなく、看護師・放射線技師・外科医・緩和ケア医など他の医療従事者とも日々円滑にコミュニケーションを取る必要があり、また患者さんの死に向き合う機会も多いからです。

しかし、患者さんと長く付き合いながら信頼関係を構築できること、「がんとの共存」を目指してQOL(生活の質)の向上を一緒に目指していけることはやりがいがありそうで、魅力的だと感じています。

がん治療は、免疫療法(体の免疫システムに、がん細胞を攻撃させる治療法)や、がん細胞のみに働きかける放射線療法(Proton beam therapy)などが最近出てきて、とてもホットな研究分野です。

短期間の実習では時間が足りなかったので、がんについてさらに臨床・研究面から知りたいなと思っています。

今後臨床研究に関われないか現在医師の先生に掛け合っているので、実現すると良いです!