まーしーのロンドン大医学部生活

University College London医学部6年生のロンドン生活、医学部での経験をお伝えします!(内容は個人の見解に基づくものであり、所属組織・その他団体と一切関係ありません)

臨床実習での様々な経験を振り返る Balint Group

イギリスはかなり日が長く暖かくなってきたので、先週は夕方までのんびりお散歩を楽しみました!

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↑午後7時過ぎのトラファルガー広場の様子です。噴水やモニュメントの周りに座って皆黄昏ています…

 

今回は、今年の1月~3月に私が毎週参加していた、Balint Groupという医学生有志のディスカッションセッションの様子をお伝えしたいと思います。

 

Balint Groupとは

イギリスのかかりつけ医(GP)が患者さんの感情を理解して良い関係を築いていくために始まったこの活動は、現在Balint Societyというイギリスのチャリティー団体によって継続されています。

患者さんへの対応に困った事案についてグループディスカッションを行い、医療従事者としてベストな接し方を皆で探っていきます。

医師に限らず様々な医療従事者が活動に参加でき、私が在籍するUCLを含めた複数の医学部でも開講されています。

balint.co.uk

 

セッションの進め方

毎週2人の精神科医の先生と10人ほどの医学生が(現在はオンラインで)集まって、日々の臨床実習で遭遇した事例を基にディスカッションしていました。

各セッションでは、まず、学生の1人が、臨床実習で見かけた医師の先生と患者さんのやり取りの中で、違和感を感じた経験や得た気づきについて、全体に共有します。

その後、他の学生が当時の状況や患者さんの様子について詳しく質問しながら、同じような状況での対応の仕方について自分の意見を述べたり、他の学生の意見にコメントしたりして、さらに話題を広げていきます。

今年のBalint Groupでは、普段の臨床実習での経験の他にも、コロナ対応に医学生として参加して感じたことや経験したことも話題にのぼりました。

ディスカッションのトピック例

患者さんにまつわる具体的な内容は書けませんが、議題の例を紹介します。

  • イギリスの皆保険制度である国民保健サービス(NHS)に加入していない移民の方にがんが見つかったので、自国に戻って治療を受けなければいけないが、患者さんは英語を話せなかったので、自身の体調や今後の治療プランを理解できていない様子だったこと
  • 手首の小さな骨折が以前見逃され再診した患者さんに対して、外科医の先生が「安静にする以上どうしようもない」「見逃したことに対して金銭的補償が欲しいのならここでは対応できない」と大声で対応していたこと
  • 内分泌系の疾患で入院している患者さんの目の前で、医師の先生が医学部生の指導の一部として、患者さんの肥満を典型的な危険因子として強調したこと

 

 

参加してよかった点

Balint groupのセッションは、診療科ごとの勉強に集中している時とは違う切り口で臨床実習を振り返る機会となりました。

実習中に学んだ医学知識はもちろん復習しますが、患者さんとのコミュニケーションが難しいと感じた際の思考を振り返る機会は、9月に実習を開始してからあまりありませんでした。

しかし、患者さんの考えを理解してニーズに合わせた治療を提供するために、医師のキャリアの早い段階から、患者さんとの接し方を理論ではなく実践しながら学ぶことがとても大切です。

特に、グループセッションでは、

  • 周りの意見を聞いて、患者さんへの接し方について思考が深まり
  • 私とは違う病院・違う診療科で実習をしている他の医学生の経験も自分のこととして考える

ことができます。

また、コロナ禍で臨床実習でも、医学知識に限らず医師としての姿勢について最大限の学びを得ようと他の学生が日々実習に参加していることが伝わってきて、刺激になりました。

 

来年もまた参加したいです!

例年のようにオンラインでなく対面のセッションだったとしたら、学生同士お互いをより深く知り、もっと白熱した議論ができたかもしれないと感じています。

来年精神科で実習を行う際にまた開催されるそうなので、参加しようと思います!