まーしーのロンドン大医学部生活

University College London医学部6年生のロンドン生活、医学部での経験をお伝えします!(内容は個人の見解に基づくものであり、所属組織・その他団体と一切関係ありません)

医学部の調理実習 - culinary medicine -

先日、日本の中学での家庭科以来久しぶりに調理実習をしました!

まさか医学部に入ってから調理実習があると思わなかったので、この日の噂を友達から聞いた時は半信半疑でした。笑

 

GP実習の一環である"culinary medicine"

この調理実習は、地域のかかりつけ医(GP)での実習期間に行われます。

"医師が栄養学の基礎知識を身に着け、患者さんにより健康的な食生活を促せる"ようになるためのCulinary medicine(直訳:料理の医学)のセッションです。(参照:What is CM | Culinary Medicine UK

イギリスでも、culinary medicineに関する講義に加えて調理実習まで行う医学部は多くないそうですが、私の在籍するUCLはロンドンの調理学校の一室を借りてセッションを開催してくれました!

 

糖尿病患者さんにできる支援

問診の練習

まず料理をする前に、生活習慣について掘り下げ行動変容を促す問診の練習をペアで行いました。

  • 糖尿病とはまずそもそもどんな病気か?
  • 普段どんな食生活を送っているか?患者さん自身が改善したいことはあるか?
  • 糖尿病関連の病気のリスクを下げるために、どんなことを実践したいか?
  • 食事や運動といった生活習慣を改善するためにどんなハードルがあるか?

といった内容を、シナリオに沿って患者役と医師役に分かれて議論しました。

患者さんが抱えるジレンマを受け止めて、出来る範囲の行動に移しやすい具体的な提案をし、必要であれば栄養士やオンラインの栄養学講座を紹介します。

日々の生活習慣を変えるには患者さん自身がしっかり意味付けをすることが大切なので、自発心を尊重して話にじっくり耳を傾ける姿勢を意識しようと思いました。

提案レシピ

「ヘルシーな料理は決して難しくない」ということを体感するために、豆カレー、野菜のトマト煮、全粒粉のパンを作りました。

f:id:ma-c-s:20220313181746j:plain

減塩を促しつつ風味を増すために、しょうがやにんにくといった薬味に加え、ターメリックコリアンダー、レッドチリ、クミンといったスパイスを両方に加えました。

私のグループは、実家住まいで料理をしたことがあまりない学生ばかりだったので、私は玉ねぎのみじん切り係として重宝されました。笑

 

インドに留学していた時にインドの豆カレー(ダルカレー)が大好きだったのですが、乾燥豆から作ったことはありませんでした。

豆を長時間水に漬けておかなくても、すぐに煮えて簡単に作れたので、今後自炊メニューに加わりそうです!

f:id:ma-c-s:20220313182049j:plain

↑出来上がった料理をビュッフェ形式で皆で食べました!

 

筋力が低下した高齢患者さんにできる支援

問診の練習

「食事改善」と聞くと肥満体形の人が体重を減らすことを想像しがちですが、高齢の患者さんが特にタンパク質・運動不足や吸収力の低下から筋肉量が減少するサルコペニアに対しては、食事から体重を増やすアプローチを取ります。

問診練習では、

  • 患者さんが今の栄養状態についてどう感じているか
  • 食事内容を変える際にどんなハードルがあるか
  • 身体症状(呼吸がしづらい、便秘等)が食欲に影響しているか
  • 買い物や料理の介助を受けているか

といった内容を話し合いました。

簡単にできる食事の改善点としては、

  • マッシュポテトや温野菜にバターを混ぜる
  • (イギリスでは低脂肪乳が一般的ですが)高脂肪乳を使う
  • スープに溶き卵を入れる

といった提案があがりました。

提案レシピ

病院では栄養補助ドリンクがよく使われていますが、自宅で栄養価の高い飲みやすいスムージーを作るためのレシピです。

1つ目は、ピーナッツバター、バナナ、ヨーグルト、はちみつ

2つ目は、アボカド、オレンジジュース、ブルーベリー、ヨーグルト

等を混ぜたスムージーを作って試飲しました。

 

まとめ

医師として患者さんへ具体的な提案をするために、基本的な栄養学の知識や簡単な生活改善のアイデアを学べたことはとても有用でしたし、何より楽しくて美味しい一日でした!

スムージーにしてもカレーにしても、同じメニューが日本で受け入れられるかは分からないので、患者さんの文化や嗜好も考慮する必要があるなと感じました。

ちなみに、医師のキャリアの途中でCulinary medicineの修士号を取るために一年間料理学校で勉強する先生もいらっしゃるそうです。