まーしーのロンドン大医学部生活

University College London医学部6年生のロンドン生活、医学部での経験をお伝えします!(内容は個人の見解に基づくものであり、所属組織・その他団体と一切関係ありません)

精神科の実習で得た気づき

前回に引き続き、精神科での実習についての記事です。

今回は、実習を通して私が考えたことや気づいたことについて書いていきたいと思います。

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↑先日UWCつながりで、ケニアとベルギーの友達と料理をしました!

 

どうやって「患者さん中心」の問診を進めていくか

精神科専門医の先生は、入院患者さん一人一人と少なくとも週に1時間個室で話し合いの時間を取ります。

患者さんの同意が取れた時は、私もミーティングに同席しました。

時には患者さんの家族や他の精神科関連分野のスタッフも呼んで、患者さんの近況を詳しく確認しマネジメントプランを必要に応じて練り直します。

患者さんの精神状態を確認するにはもちろん本人に喋ってもらうのが一番ですが、患者さんによってはやり取りがとても難しいと感じました。

精神科に限らず患者さんから問診を取る際は、Open question(5W1Hで始まるような回答が自由な質問)とClosed question(「はい」か「いいえ」で答える質問)をうまく組み合わせて質問していくのですが、学習障害がある患者さんとのやり取りでは、誘導尋問になってしまわないように、言葉のチョイスに細心の注意を払って分かりやすい質問を投げなければいけません。

また、ミーティングの序盤は口数が少なかった患者さんが徐々に、性的暴力の経験がいまだにとても苦しいこと、対処の仕方が分からなくて辛いことを打ち明けたこともありました。

患者さんの話を全て聞き、沈黙の時間も取りながらケアのニーズをゆっくり深掘りしていく姿勢が大切と感じました。

専門医の先生が、「患者さん中心」で問診を進められるように、患者さんによって対話のアプローチを変えていたことが印象的でした。

 

医療者として何ができるか

実習中に最も記憶に強く残っている精神科専門医の先生のコメントを共有します。

「自殺願望がある患者さんに対して、コミュニティケアを充実させたり1対1で看護師さんをつけたりして自殺のリスクを少なくする手助けはできる。しかし、自殺の意思自体を変えることはできない。自殺遂行の計画を周囲に頼らず一人で綿密に立てるような患者さんが一番ケアを必要としてるけれど、一番リーチするのが難しい」

検査結果や数値で正確に状態を評価することが難しい精神疾患の治療において、医療者としての限界を日々感じていらっしゃるようでした。

ちなみに、コーランでは自傷行為が禁止されているため、ムスリムの患者さんにとっては宗教が一番の自殺抑制要素になるそうです。

 

まとめ

老年内科、精神科と長期の治療を必要とする診療科での実習を通して、将来は患者さんと長く関係性を築いていく科に進みたいなと考えるようになりました。
  • 病気の治療だけでなく、生活の質を向上するお手伝いができるから
  • 患者さん個々人にあった治療を提供するには医療スタッフのチームワークが非常に重要であるため、その結果病棟での医療スタッフ間の関係性が良いから

というのが主な理由です。

元々外科を希望して医学部に入学しましたが、イギリスの外科医は手術直前・直後以外患者さんと接する機会がないため、将来のキャリアの方向性が変わりそうです。