バーミンガムでの家庭医実習 ②実習後半
前回に引き続き、今年1月のバーミンガムでのGP実習についてです。
1か月の実習の後半は、自分の診察室を持って(!)、
- 患者さんを診察し、
- その結果を指導医の先生にプレゼンし
- 一緒にマネジメント方針の議論を行い
- その方針を患者さんへ説明する
という一連の流れを任せてもらえました。
5年生の時にもGPで実習を行ったのですが、まだCOVID-19が流行っている時期だったためCOVID-19感染疑いの症状のケースに電話で対応することが多かったです。
今回は、より色々な主訴を持つ患者さんを毎日診察室で診て問診や身体診察を行ったので、昨年よりさらに充実した学びを得ることができました。
いくつか特に印象に残ったケースがあったので、ここで書ける範囲で紹介します。
がん疑いのReferral
GPとして特に重要な役割のうちの一つが、がん疑いのケースの専門医への紹介です。
イギリスでは、2 Week Wait Referralという制度があり、患者さんががんの症状・症候を示した場合、それぞれのがんに対応する検査に2週間以内に繋げる、という仕組みがあります。
年齢ごとにそれぞれのがんに対応する症状・症候が明記されており、例えば、
- 40歳以上で腹痛と(意図していない)体重減少
- 50歳以上で原因不明の直腸出血
- 60歳以上で鉄欠乏性貧血、もしくは下痢・便秘などの胃腸の変化
を持つ患者さんを診た場合、大腸がんの検査である大腸内視鏡を受けられる医療機関へ2週間以内に紹介しなければいけません。
この条件にぴったり当てはまらなくてもGPが必要と考えた場合や、免疫便潜血検査(便の中にヘモグロビンが混じっているか調べる検査)を行って陽性となった場合も検査を行います。
患者さんの症状からがんを疑って早急に検査を調整する、というのは医学部の試験でもよく問われる問題なので、イギリスのがん患者さんをサポートするチャリティー団体がまとめているページをみて、何歳で・どの症状なら・どの検査を行うのか暗記しました。
私が診た患者さんのうちの一人が、3か月ほど食べ物が飲み込みづらく腹痛を訴えていたので、検査の詳細や必要性を説明したうえで、食道がん・胃がんの検査である胃カメラの受診を調整しました。
ちなみに、ロックダウン中の受診控えや医療体制のひっ迫から、がんが進行してから初めてGPにやってくるケースや2週間以内に対応することができないケースが増え、問題視されています。
児童福祉の対応
その地域に住む患者さんと一番近い距離のGPだからこそ、子どもの養育状況や犯罪被害にも接することがあります。
性犯罪に会い夜中警察に保護された12歳の少女に会ったときは、頑なに無言を貫く少女に対して、GPの先生が犯人に関する聞き取りや検査の重要性に関する説明を根気強く行っていました。
また、その翌日、学校の先生、児童福祉課、立ち会った警察、GPの先生で緊急ミーティングが開かれ、これまでの少女の行動歴や家庭環境をまとめたうえで、どのように今後少女を守っていくべきかを議論していました。
私は小児科に興味があるので、病気の症状だけでなく、このように家庭・学校・地域団体と連携しながら子どもの権利を守っていける医師としての役割にとても魅力を感じました。
↑私がよく使っていた診察室です