産科の夜勤
他の科での実習についてまだまとめきれていませんが、先週から始まった産婦人科の実習の一環の夜勤が非常に強く記憶に残ったので、この記憶が薄れないうちに記事にしたいと思います。
夜勤のスケジュール
夜8時から朝8時までの12時間のシフトです。
産婦人科医の先生は通常月に4回夜勤に入るそうで、助産師さんの中には(例えば日中育児に時間を割くために)夜勤勤務のみの方もいらっしゃいました。
私は小児科実習以来約4か月ぶりの夜勤だったので途中眠くならないか心配でしたが、「お産は夜の方が多いからきっと忙しくなるよ」と言われ、実際その通りでした。
普段から医学部の実習では「今日の実習で何を経験・達成したいのか」聞かれることが多いのですが、私は「経膣分娩に立ち会ったことがなかったのでご縁があれば立ち会いたい」と伝えたところ、一通り病棟回診が終わった後、助産師さんの補助に入って2つのお産に立ち会うことが出来ました。
お産で感じたこと
本当にお母さんの体から赤ちゃんが生まれてきて、生まれた途端泣き声をあげ、誕生から時間が経たないうちに母乳を飲んでいる姿が、一言にすると神秘的でした…!
赤ちゃんの頭が出てきた段階で助産師さんと一緒に頭を支えたり、助産師さんが胎盤の娩出を行っている際に時刻をカルテに記入して赤ちゃんの身体測定の準備をしたりしました。
辛い表情をしていたお母さんが、我が子を抱いた途端、痛みを忘れて表情が柔らかなったことが印象的でした。
お産に至るまでのストーリー、立ち会う男性パートナーの立ち振る舞い、麻酔の使用有無の選択もそれぞれで、パートナー同士が共に意思決定をしていく過程も大事だと感じました。
お産は命がけ
1人目のお産が終わった後、産科のカルテを書き家族の時間を取るために、一度病室を離れました。
すると、15分ほど経って「出血量が多い気がする」とナースコールがあり助産師さんと一緒に部屋に戻ったところ、確かにシーツの下に血が溜まっていました。
お母さんは当初「出産直後でまだ痛いから触診してほしくない」とおっしゃっていたものの、産婦人科医の先生が「今出血の原因を探った方が良い」と説得し、指を膣に入れたところ、どっと血があふれてきました。
私は、胎盤娩出してからこの短時間に子宮からこんなに出血するものなのかとびっくりしてしまいました。何か手伝えるように手袋をして準備していたので、プラスチックの容器を助産師さんから受け取り、血や血塊を受け止めましたがすぐにいっぱいになってしまいました。
緊急アラームで多くの助産師さんや産婦人科医の先生が駆け付け、点滴や子宮の収縮を誘発する薬が投与され、分娩時からそれまでの状況確認が行われました。
私は助産師さんの一人と一緒に、出血量の推定と尿道カテーテルの準備を行いました。
出血したことに加え、おそらく切迫した雰囲気へとガラッと変わったことから、お母さんの意識が一時遠のいてしまいましたが、薬のおかげで出血はすぐに収まり、容体もその後安定しました。
分娩後出血の原因
よくある原因について、英語では"4T"と略されています。
- Tone: 子宮が分娩後収縮せず、胎盤がはがれたところから出血し続けている
- Tissue: 胎盤の一部が子宮内に残っている、もしくは子宮筋腫のせいで子宮が上手く収縮できない
- Trauma: 分娩時に産道が傷ついて出血している
- Thrombin: 母体にもともと血液凝固の問題がある
この中で一番上の「子宮の収縮不足」が最も頻発で、今回のお母さんの場合は、赤ちゃんが4.5キロと大きく子宮が通常より伸長していたことと、お母さんが肥満体型であったことがリスク因子でした。
緊急現場に立ち会って感じたこと
緊急時のアセスメント手順と介入方法は、4年生の時から授業でもシミュレーションでも何度も扱っているのですが、今回初めて本当の緊急現場に居合わせました。
いざ大量出血をし意識が薄れている患者さんを目の前にすると、正直怖いという気持ちが出てきてしまいましたが、助産師さんと産婦人科医の先生方が一丸となって迅速に対応している姿を見て、
- 状況別の緊急時対応を体で覚えるまで何度も練習すること
- チーム内のコミュニケーションを円滑に行うため、指名しながら的確にタスクを割り振ること
がとても大切で、より一層真面目に実習に取り組もうと思いました。
朝の引継ぎ~夜勤明けのブランチ
1時間半ほど休憩の時間をもらったあと、2組の家族それぞれの容態を観察しに回り、体やベッドを綺麗にするお手伝いをしました。
そうこうしているうちにあっという間に朝の8時になり、日勤チームへの引継ぎがありました。
引継ぎの際は
- 名前
- 日勤(これから仕事)か夜勤(これから帰宅)か
- 役職
と全員自己紹介するのですが、その際に"Night medical student"と言ったところ「医学生?すごい、お疲れ様!」「色々な場面で手伝ってくれてありがとう!」と先生方が拍手してくださり、とても嬉しかったです。笑
そして、ラッキーなことに近くのカフェで夜勤明けに朝ごはんを食べる話が持ち上がり、私もお誘いいただきました!
ちょっと凝ったイングリッシュブレックファーストが、ペコペコのお腹を満たしてくれました!
子どもを持つ先生方が大半だったので、産婦人科医のキャリアと育児の両立についてもざっくばらんなお話を伺えました。