医学部在籍中の学士号 iBSc ①学士号取得の意義
イギリスの医学部では、iBSc (intercalated BSc)といって1年間医師免許取得に向けた勉強から離れて、理学士号(BSc: Bachelor of Science)を取得するシステムがあります。
私が在籍しているUCLの医学部では、学士編入の学生以外3年次で全員iBScを行うことになっていて、約20ある選択肢から希望のコースを選択できます。
私は昨年Immunology, Infection and Cell Pathology (免疫学、感染症学、細胞病理学)のコースを選択し、BScを取得しました。
以下のページに私の体験談が載っています!
iBScが希望制もしくは制度として存在しない医学部に在籍していてもiBScを取得したい場合は、他の医学部のiBScコースに申し込んだり、(珍しいと思いますが)修士課程(MSc)を履修したりする医学生もいます。
医学生の間に1年間臨床医学から離れて研究面に触れるという機会は、日本の医学部にはないと思います。
イギリスでは医師免許取得に5年かかるので、iBScの1年間が最初からカリキュラムに組み込まれている医学部は卒業まで1年多く、計6年かかります。
余計に1年かかっても、私はiBScを取得することに大変意義があると考えています。
医学研究にキャリア早期に取り組める
医学研究というと医師になってから本格的に行うイメージがありますが、学生のうちから医学研究に興味を持ち将来どのように研究に携わっていきたいか考えておくことは大切です。
イギリスでは、
- 複数の診療科を回る以外に研究にも携わる初期研修プログラム(Academic Foundation Programme)
- 医学部を休学して行う3年間の博士課程(MBPhD)
等、医師としてのキャリア早期から研究に重きを置くプログラムが用意されているので、医学部低学年のうちにiBScで研究に没頭すると、将来これらのコースに進みたいか見極めやすくなると思います。
ちなみに、私は基礎研究にとてもやりがいを感じていたものの、正しい方向に進んでいるのか分からない中で研究し続けて成果を出さなければいけないという環境では、研究トピックに対する好奇心より焦燥感の方が大きくなってしまうと感じました。
そのため、医学部在籍中に博士課程に進学する選択はしませんでしたが、将来診療科を決めてから医学研究に打ち込む期間を取っても良いなと考えています。
初期研修、専門医課程のアプリケーションで有利
イギリスでは初期研修のマッチングや専門医課程のアプリケーションの際に、それまでの実績や成績に応じたポイントで順位付けが行われ、上位の人から希望する地区に配属されたり志望するポストに就いたりする仕組みになっています。
iBScの成績もこのポイント加算の対象で、iBScの1年間を通した成績によって、加点される点数が変わります。
(私の学年から、初期研修のマッチングでiBScの成績は考慮されないことになってしまいましたが…)
ちなみにアプリケーションにおいて研究面での実績を評価するセクションでは、iBScの他に、筆頭著者の論文の数や学会での口演やポスター発表の回数等が考慮されます。
そのため、臨床医にも研究に取り組む姿勢を求めていると思います。
医学部高学年での実習中に、臨床と研究両方に興味を持つ
iBScの1年間には、授業やゼミ、研究プロジェクトで毎日論文を読む習慣がつきます。
論文中に示されているデータの分析の仕方や論文の収集方法を身に着けておくことで、その後の臨床実習中に、興味のある診療科の先生に掛け合って臨床に根差した研究に携わる機会を掴みに行ったり、自ら研究につながりそうなトピックを探したりできると思います。
次回は私の体験談!
ここまで、イギリスの医学部で特徴的なiBScという制度をご紹介しましたが、次回は私が実際に免疫学・感染症学のiBScの1年間に履修していた授業、行っていた研究プロジェクトについて詳しく書きたいと思います!
↑私がプロジェクトを行っていたロンドン、キングスクロス駅前にある研究施設です!上から見ると染色体の形になっているそうです。