まーしーのロンドン大医学部生活

University College London医学部6年生のロンドン生活、医学部での経験をお伝えします!(内容は個人の見解に基づくものであり、所属組織・その他団体と一切関係ありません)

どうしてUCLの医学部を選んだの? ③大学のカリキュラム

イギリスの大学受験では、最大5コース(そのうち医学部は最大4コース)しか出願できないので、30以上ある医学部から4つを選ばなければなりません。

 

様々なウェブサイトやオンラインで閲覧可能な大学のProspectusを活用して、情報を収集していました。 

例えば、イギリスで医学部を設置している大学をまとめた以下のページから、各大学の医学部のウェブサイトに飛べます。

www.medschools.ac.uk

自分に合った教育・学習環境を提供してくれる大学に出願したかったので、私は大学選びの際に様々な項目を比較しました。

今回は、医学部のカリキュラムにおいて私が重視していたポイントを紹介します。

 

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 ↑UCLの医学部の校舎です。低学年ではここで一日中講義を受けます。

 

医師免許取得までのカリキュラム構成

イギリスの医学部のカリキュラム構成は、大学ごとに大きく2つに分けられます。

Traditional

最初の2年間は科学理論を重視した講義を、その後3年間は病院やGPでの臨床実習を行うカリキュラムです。

座学→実習とはっきり分かれているのが特徴で、オックスフォードとケンブリッジの2大学のみで行われています。

PBL (Problem-based Learning)

少人数でのケースディスカッションやグループワークを通して医学知識や症状のマネジメント方法を身に着けるカリキュラムです。

医学部低学年から、講義や自主学習と並行して臨床実習にかなり時間を割くことが特徴です。

Integrated

上記2つの良いとこどりで、低学年では病院での実習を少し取り入れつつ主に講義や解剖を行い、高学年では臨床実習に注力しつつ講義も受けます。

BMA(イギリスの医師会)が推奨しているカリキュラムなので、UCLを含め多くの大学で採用されています。

私は、

  • 現場でアウトプットを行う前に、体系化できるまで知識をインプットしておきたい(→ある程度基礎講義と実習に分かれている方が良い)
  • 患者さんとのコミュニケーションに慣れるまでに時間がかかりそう(→低学年から少しずつ臨床経験を積みたい)

と思ったので、このカリキュラムの大学が一番自分に合っていると思いました。

 

人体解剖実習の進め方

私は小学生の時に通っていた理科実験教室で、動物や魚の解剖をすることが大好きだったので、医学部に入学できた暁には人体解剖を自分の手でやってみたいと思っていました。

カリキュラム構成として大々的に書かれていなかったのですが、詳しく大学の資料を読み込むと、

  • 学生がグループごとにご献体を担当し実際に解剖する大学
  • 教授がご献体を解剖するのを学生が見学する大学

があることが分かったので、人体解剖の経験が積める大学を選びました。

 

Intercalation(医学部中学年での1年間の理学士号)の有無

イギリスの医学部には、医学部中学年で純粋な医学から1年間離れて、医学に関連する理学士号(BSc)を取得するIntercalationという制度があります。

大学によって5年制だったり6年制だったりするのは、Intercalationを必須としている大学とそうでない大学があるためです。

私は2019/20に免疫学・感染症学・細胞病理学についての理学士号を取得したので、また今度詳しく書きたいと思います。

UCLでは、学士編入の学生以外は全員3年時にIntercalationを行うこととしているので、20種類以上のコースから興味のあるものを選べます。

例えば、UCLが強い神経科学のコース、数学・コンピュータサイエンスの医療への応用のコース、医療人類学や医療倫理のコースと様々な選択肢があります。

医師免許だけであれば5年で医学部卒業できるところ、余計に1年かかってしまいますが、

  • BSc(理学士号)を取得すれば、将来のマッチングや専門医コース出願の際に評価される
  • 学生のうちに研究に従事する機会が得られる

といった、将来キャリアプランを建てるうえでのメリットが大きいと考えました。

Intercalationが必須でない大学の場合、コースの選択肢が数少なかったり、ほかの大学に出願する必要があったりするので、私はIntercalationが必須で制度が整っている大学が良いなと思いました。

 

MBPhD(医学博士課程)進学の選択肢

MBPhDは、医学部4年次と5年次の間に3年間研究を行い、PhD(博士号)を取得するプログラムです。

出願に当たっては、イギリスの医学部に在籍しBScを持っていることが条件なので、この制度を利用し6+3=9年間かけて医学部を卒業した暁には、

  • MBBS = 医師免許
  • Intercalated BSc = 理学士号
  • MBPhD = 医学博士号

の3つを取得していることになります。

イギリスで医学系のPhDを取得する場合通常4年間かかるので、(実際4年間に延長する人も多いと聞きますが)3年間でPhDが取得できるこのコースは、研究職を目指す学生にとって非常に魅力的だと思います。

また、イギリスでPhDをする場合は(授業料を払うのではなく)手当をもらえるので、研究に集中して取り組めます。
現在この制度がある大学は多くありませんが、決して他大学に進むとこの選択肢が絶たれるわけではなく、例えばUCLに4年次で編入すればMBPhDのコースに進むことが可能です。

 

最後に

人によって重要視するポイントは違うと思いますが、調べれば調べるほど大学ごとの特色が見えてくるはずです。

私は、それぞれの大学で勉強している姿を想像することがとっても楽しかったです!