まーしーのロンドン大医学部生活

University College London医学部6年生のロンドン生活、医学部での経験をお伝えします!(内容は個人の見解に基づくものであり、所属組織・その他団体と一切関係ありません)

海外旅行保険で病院受診

渡英してから3年以上経ちますが、幸いなことに私は今まで一度も体調を崩したことがなく、イギリスで病院にかかったことがありませんでした。(もちろん実習では何度も行っていますが笑)

1月中旬に家で足をひねり、足の甲の真ん中の外側にあるcuboid bone (立方骨)の周りの靭帯を損傷してしまいました。

イギリスの医療サービスに患者としてお世話になった体験をまとめておきます。

 

イギリスの医療制度で海外旅行保険を活用

ひねった後少しずつ腫れが増していく足を見ながら、「コロナ対応で今忙しい病院で診てもらえるのか」という不安が頭をよぎりました。

怪我から一晩経ってもdorsiflexion(背屈:つま先を持ち上げること)が痛く立てなかったので、病院に行くことにしました。

イギリスの国民皆保険制度

イギリスには、NHS(国民保健サービス)と呼ばれる国民皆保険制度がありますが、2つ日本の保険制度と違うところがあります。

まず、日本は1割負担、3割負担と個人によって負担額が異なりますが、イギリスでは全員自己負担なしで医療を受けることが出来ます。

ビザ申請の際にNHS受診料を払っているので、留学生である私も同じ扱いです。

そして、イギリスにはGP(General practitioner: かかりつけ医)制度があるので、患者は受診する医療機関を選ぶことができません。

患者はどんな症状でも登録したGPをまず受診し、必要に応じて高等医療機関に紹介されます。例外的に、救急の場合は救急外来を利用します。

 

NHSの弱点をカバーするPrivate service

このNHSの仕組みで受診時に問題となるのが、待ち時間です。

以前登録先のGPで、アフリカ渡航のために予防接種を受けようとしたところ、1か月以上先しか空いていないと言われた記憶があります。

また、救急外来でも命に別条がない症状の場合、一晩待つこともあると聞きます。

そこで、イギリスには無料診療のNHSと並行して自費診療のPrivate serviceが存在し、日本のように、

  • 自分で行く病院を選び、
  • 比較的直ぐに診てもらう

ことができます。

 

日本の海外旅行保険のロンドンでの威力

Private serviceでの治療費はすべて患者負担になるので、私はこのPrivate service受診分をカバーする日本の海外旅行保険の留学生プランに加入しています。

ロンドンには特に日本人が多いので、日本の海外保険と提携した日本人用外来がいくつかあり、診察時キャッシュレスで日本人の先生に診ていただけます。

ズキズキorちくちくした痛みといった細かい症状を説明したり、治療方針について希望を伝えたり、海外生活に慣れた人でもけがや病気の時は母国語を話したくなることもあるかと思います。

私は朝病院に電話をかけたところ、午前中に診察していただけました。

イギリスの大学で学ぶ日本人医学生を珍しく思ったのか、日本人用クリニックの先生や看護師さんが沢山話しかけてきてくださったので、仲良くなりました。笑 

 

海外旅行保険利用の注意点

ちょうど当日同じ病院の形成外科の外来診療に空きがあったので、専門医の先生に診ていただくことになりました。

この際、保険会社の提携先である日本人用クリニックの受診料は、すんなりと日本の海外保険でカバーしてもらえましたが、同じ病院の中でも他のPrivate serviceの専門医の診察を受ける場合は、保険会社に必要書類をお願いする必要があります。

自分で保険会社に電話して、

  • 状況報告
  • 受診した病院の名前
  • 専門医の名前
  • 支払い確約書を送付するメールアドレス

等の情報を伝え、すぐにGuarantee letter(支払い確約書)を病院と専門医宛てにそれぞれ1通ずつ送ってもらうようお願いしました。

書類が届くまで検査を始められなかったのですが、自分で後で書類をまとめて治療費を請求するのは大変と思い、待つことにしました。

おかげで、病院では一銭も支払うことなく、

  • X線(骨折していないか確認)
  • 足首固定用ブーツ
  • 松葉杖
  • 病院までのUber

の費用を保険でカバーできました。

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↑足首を固定するためのこのブーツは、再利用にはコストがかかるので使い捨てみたいです…!

 

診察でちょっとがっかりしたこと

患者さんに問診をする際には、Social history(社会歴)というセクションで生活状況を確認するように習います。例えば、

  • 日常生活に支障があるか
  • 不自由な生活を強いられる場合、家族やソーシャルサポートに助けを求められるか
  • 喫煙・飲酒・薬物使用の頻度や量
  • 病気が仕事や学業に影響を及ぼしているか

といった質問をします。

私はロンドンのフラットで一人暮らしをしていますが、建物にエレベーターがありません。また、現在ロックダウン中なので気軽に友達の助けを呼ぶわけにもいきません。

しばらくブーツと松葉杖で家の中で過ごさなければならないので、もちろん日常生活や買い物に支障が出るわけですが、専門医の先生に上記のような項目を気にしていただけなかったのが残念でした。

この点は、反面教師にして、私が今後患者さんを問診する時に忘れずに確認したいと思います。

 

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足を治してまた早くお散歩したいです!