まーしーのロンドン大医学部生活

University College London医学部6年生のロンドン生活、医学部での経験をお伝えします!(内容は個人の見解に基づくものであり、所属組織・その他団体と一切関係ありません)

医学生としてコロナ対応のお手伝い ②参加の決断とサポート

日本では医学生がコロナ対応に当たることはまだあまり現実的ではないと思うので、私一個人の視点から、イギリスの医学生がどのようにパンデミックを受けた医療現場の最前線で活動しているかまとめておきたいと思います。

 

①では、集中治療室(ICU)等でコロナの患者さんを診る前に私が行った準備について書きましたが、今回は、医学生がそもそも参加を決断する理由、また参加する場合医学部や病院から受けられるサポートについてまとめます。

 

コロナ対応は志願制

「学徒動員」に感じる違和感

「医療が逼迫したヨーロッパでは、医療系学生の学徒動員が起こっている」といった表現を日本のメディアで何度か目にしました。

しかし、戦時中に学生を強制労働させた学徒動員とは、少なくともイギリスの状況は少し違うと感じています。なぜなら、

  1. コロナ対応に参加するかどうかは個人の判断に委ねられている(志願制)
  2. コロナ対応と並行して、出来る限り病院実習を継続している

からです。

持病がある・感染すると重症化リスクが高い人と同居しているといった理由がある学生は勿論お手伝いが難しいと思いますが、特に理由がなかったとしても不参加を非難されることはありません。

連日のように医学部や病院のスタッフから届くメールには、

  • コロナ対応に参加している生徒向けに「皆の頑張りがとても助かっています」「病院のスタッフから多くのお褒めの言葉が届いています」「コロナとの戦いは長くなりますので無理をしないでください」
  • 参加していない生徒向けに「参加していないからと言って後ろめたさを感じる必要はありません」

といったメッセージが含まれていることが多いと感じています。

 

ではなぜ学生は自分から参加するのか?

「必須でもないのにわざわざ感染リスクの高い現場に行くなんて」という考えもあるのかもしれません。

しかし、私や周りの同級生の多くが、医療全体が逼迫している状況において学生でありながら貢献できることを嬉しく思っています。

通常の実習では、私たち医学生は現場の医療スタッフに教えていただく立場ですが、コロナ対応では、HCAの医学生を含む医療スタッフがそれぞれタスクを担当し、一丸となってこの危機を乗り越えようとしています。

そのため、最前線の現場でのチーム医療を体感し「私も医療を支えているんだ」とやりがいを感じる学生が多いのではないでしょうか。

もちろん、通常の実習では見る機会が少ない緊急処置や呼吸器具の扱いについて、実践的な知識を深められることも大きなメリットだと思います。

 

医学生のサポート体制

学生は実習と並行して新しい環境に身を投じることになるので、医学部や病院は様々な策を講じて学生の身体的・精神的負担が重くなりすぎないようにしています。

例えば、私が実習をしている病院では、

  • HCAのシフトは週20時間までと定める(感染者数が急増して週30時間までに変更されましたが、全体平均は週20時間になるように各自調整)
  • HCAの仕事を理由に実習を欠席した場合、後で追いつけるよう調整する
  • ICUでの活動を振り返り、学生同士で体験を共有するセッションを毎週オンラインで開催する
  • ICUで働く他の医療スタッフと同様、精神科医の先生と自由にお話しできる機会を設ける

といった仕組みがあります。

また、いつ感染していてもおかしくないため、ほかの病院スタッフ同様、週に2回LFT(Lateral flow test)を自宅で行い、陽性・陰性にかかわらず結果を報告するよう義務づけられています。

 

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↑病院で配布される検査キット。右上の白いパッケージに入っている綿棒を使って、鼻の粘膜を採取します

 

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↑採取した粘膜と検査液を混ぜたものをSの部分に乗せて、30分待ちます。抗原が検出されている場合は、Tの横に線が出現します。(写真は、Cの横にのみ線が出ているので陰性)

 

検査キットの見た目からも想像がつきますが、検出する物質が違えど仕組みとしては妊娠検査薬と同じです。

LFTは短時間で結果が分かる簡易的な抗原検査なので、これで陽性結果が出た場合は後日より正確なPCR偽陽性ではないと証明することになっています。

 

まとめ

パンデミック医学生ICU参加も、全員にとって初めてのことだらけなので手探り状態です。

そのような状況だからこそ、医学生と医学部・病院の間でコミュニケーションをしっかり取り、出来る限り医学生の支援を充実させたり不安を解消したりすることで、一丸となって医療を守ろうとしているように感じます。