まーしーのロンドン大医学部生活

University College London医学部6年生のロンドン生活、医学部での経験をお伝えします!(内容は個人の見解に基づくものであり、所属組織・その他団体と一切関係ありません)

医学生としてコロナ対応のお手伝い ⑤実際に参加して

イギリスのCOVID-19感染者数は大分落ち着いてきたものの、私の実習先の病院ではまだまだ患者さんを多く受け入れているので、医学生も実習の合間を縫ってお手伝いに参加しています。

今回は、緊急治療室(ICU)でのコロナ対応のお手伝いに医学生として参加して、私が大変だと感じたこと、やりがいがあったことを書き留めておきます。

 

大変だったこと

長時間のマスク&立ち仕事

慣れない活動内容だったためにさらに大変に感じたのかもしれませんが、N95マスクを身につけて立ちっぱなしの12時間シフトはやはり疲れました。笑

マスクのゴムやフェイスシールドのゴムが頭にずっとついているので、夜には酸欠のような頭痛を少し感じましたし、足もパンパンでした。

指示の聞き取り

おそらく初めて聞く薬や器具の名前がいくつかあり、看護師さんにマスク越しに早口で言われると聞き取るのが大変でした。

また、同じ薬でも錠剤によって量が違うことがあるので、聞きなれない薬の名前と必要量を覚えて倉庫で見つけることが、慣れるまで大変でした。

私の中途半端な理解で薬の種類や量を間違ってしまっては大変なので、その場で聞き返したり処方前に再度確認をお願いしたりして、コミュニケーションのミスがないように努めていました。

患者さんの家族との対面

緊急治療室ではかなり容態の悪い患者さんを受け入れているので、最期が近いであろう患者さんの家族がマスクやガウンを身に着けて対面に来ている場面に遭遇しました。

私は、各シフトで担当する患者さんのバイタルや血液検査の数値ばかりに注意を払っていましたが、(当たり前ですが)ひとりひとりに家族やこれまでの人生があることを考えると、いきなり生活を一変させてしまう感染症はやはり怖いなと思いました。

 

やってよかったと感じたこと

新しいスキルの習得

最初は簡単なバイタルの確認でさえ手間取っていましたが、分からないことを質問すると看護師さんや医師の先生がとても丁寧に一から教えてくれたので、新しいことを吸収できました。

緊急治療専門の医師の先生が、超音波を使いながら点滴の管を入れていた際、その過程1つ1つを説明していただきながら間近で見学でき、超音波で動脈と静脈がどのように違って見えるかがよく分かりました。

また、医学部の勉強では処置の指示の出し方を学びますが、実際に挿管したり薬を準備したりする機会は今まであまりなかったので、患者さんの治療に直接関わるとはどういうことか身をもって体験できました。

医学生として貢献できるやりがい

「臨床実習を開始したばかりの医学生なので、たくさん質問してしまうと思いますがよろしくお願いします」と伝えると、どのスタッフの方も「実習もあるのにお手伝いに来てくれてありがとう!どんなことでも助かる」と返してくださり、まだまだ未熟な私でも微力ながら貢献できることが嬉しかったです。 

担当するタスクに慣れ、その日の患者さんの容態が掴めるようになると、少しずつ色々なタスクを任せてもらえるようになり、とてもやりがいがありました。

 

余談:最近の実習の様子

先月から少しずつ臨床手技の対面セッションを再開しています!

今月の頭には、実習先の病院にあるClinical skill centreで、今までオンライン授業で扱った内容を模型を使って練習したり、学生同士採血しあったりする日があり、よい復習になりました。

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↑私が今年一緒に実習している友達です!うまくカニューレ挿管できました!

医学生としてコロナ対応のお手伝い ④緊急治療室での1日

学会発表の準備やインターン、実習に追われていて少し更新が開いてしまいました…。

 

ロンドンではかなり新型コロナの患者数が減ってきています!!

それでも私の実習先の病院ではまだ通常のキャパシティ以上の患者数をICUで受け入れているので、医学生のコロナ対応のお手伝いは続いています。

足の怪我がほぼ治ったので、立ち仕事が長い緊急治療室(ICU)でのコロナ対応に先月から何度か参加しています。

朝から夜まで丸1日のシフトを行った際の体験を共有したいと思います。

 

1日のスケジュール

朝7時半から夜8時までの12時間半のシフトで、その間に交代で30分の休憩が3回ありました。

朝まだ薄暗い中病院に向かい、勤務が終わったら真っ暗だったので、(ロンドンでは珍しく)ずっと晴れていた日だったらしいのですが笑、日の光を浴びることなく1日が終わりました。

緊急治療室スタッフ専用の休憩室では、飲み物・お菓子・軽食が用意されていたので、私もサンドイッチやお菓子をいただきながら乗り切りました。

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医学生はどんな仕事を担当するの?

担当する仕事内容は患者さんの容態や周りのスタッフの数に左右されるのですが、今まで私が主に担当していたタスクを紹介します。

バイタルの記録

患者さんの脈拍、血圧、体温、尿量、呼吸器の設定等のたくさんの項目をを1時間ごとに記録しなければいけません。

また、数時間おきに追加の検査(例:血液ガス)も行う必要があります。

そのため、複数人の患者さんを1人で診ていると、全員の患者さんの数値を記録し終わるとほぼ1時間経過していることもあります。

毎時の数値を重視するというより、折れ線グラフで記録して数値の推移を掴みます。

体位変換

ずっと同じ体勢でベッドで横になっていると床擦れが起こってしまうので、定期的にベッド上での位置を動かします。

ICUの患者さんに繋がれているたくさんのチューブやモニターのケーブルが取れないよう、慎重に行います。

重症化する患者さんはかなり体重があることが多いので、複数スタッフで"Ready, steady, go"と合図に合わせて動かします。

体を持ち上げたタイミングでベッドシーツの交換や簡単な掃除もします。

薬の準備

医学生は薬を処方することはできませんが、指示に従って薬を倉庫に取りに行ったり、薬を液体に溶かし用意したりすることはできます。

また、ベッドの横にあるトロリーに必要な医療器具が揃っているか頻繁に確認して適宜補充して、看護師さんが薬を投与しやすいように補助しています。

口腔ケア、スキンケア

濡らした綿で口の中を綺麗にしたり、顔をふき取り剤で拭いたりする程度なのですが、新たな感染を防ぐためにも、顔周りは常に清潔に保ちます。

 

どのタスクでも、患者さんの尊厳を守る

緊急治療室には意識がない患者さんも多いのですが、意識の有無にかかわらず、看護師さんが、いつも患者さんの名前を呼んで処置を説明し、優しい言葉をかけていたのがとても印象的でした。

また、たとえば衣服を交換したり排泄のケアをしたりする際は、患者さん自身や周りの患者さんが全員意識がなかったとしても、必ずベッド周りのカーテンを閉め、露出を最小限に抑えていました。

”患者さん一人一人を尊重し尊厳を守りなさい”と、特に医学コミュニケーションや緩和医療の授業で何度も言われてきましたが、実際に行動に移す機会は今まであまりありませんでした。

緊急治療のような厳しい環境でも患者さんへの配慮が自然とできるように、常日頃から意識していきたいです。

 

次回は、コロナ対応に参加した感想を詳しく書こうと思っています。

どうしてUCLの医学部を選んだの? ⑤大学選びで見逃していたこと

今まで、医学部のカリキュラムや学費・学習環境という観点から、私が出願大学を選んだ際に重視していたポイントを紹介してきましたが、今回は、私が今振り返って「比較すればよかったなあ」と感じるポイントについて書きたいと思います。

 

大学の所在地

所在地については生活費や物価にばかり焦点を当てていたのですが、大学がある都市についてより詳しく調べれば良かったと感じています。

 

交通

まず、大学生活を送るうえで専攻に関係なく、交通・移動手段は大切です。

ロンドンはバス・地下鉄・電車が張り巡らされているので、車がなくても全く問題なく移動できます。

特にロンドン中心部に行く場合は、車で行くと駐車場所が難しいうえに道路使用料金がかかるので、公共交通機関の方が移動が楽です。

地方都市の医学部に通っている友人によると、少し遠い病院に実習に行く際に車がないと不便なので、運転免許を取得し車を手配する学生が多いようです。

 

 実習で診る疾患の幅広さ

ロンドンは、イギリスの中でも特に様々な人種が共存する都市です。

私も時々「イギリス生まれロンドン育ちの日本人なの?」と聞かれることがありますし、電車の1車両をとってもヨーロッパ系、アフリカ系、東アジア系、中東系、中央アジア系、ラテン系等様々な人種が混在しています。

入学する前は考えが及びませんでしたが、住んでいる人種が多様ということは、病院で診る患者さんの人種やバックグラウンド、またそれぞれが罹りやすい病気も様々だということです。

人種によって、Differential diagnosis(鑑別診断:可能性のある病気を挙げること)が変わったり、(例えば高血圧の治療で)治療薬の処方の順番が変わったりします。

また、英語がうまく話せない患者さんのために通訳を手配したり、(英語が堪能な)患者さんの家族を介して問診をしたりすることもあります。

患者さんと一対一でコミュニケーションが取れないときは、ニュアンスが途中で変わってしまっていないか、(家族が通訳する場合は)家族の意思が混じってしまっていないか注意しなければいけません。

言語・人種・職業等の差が医療の質の差につながってしまってはいけないので、低学年のうちから、医療で起こりやすいmicroaggression(自覚なき差別)を防ぐ方法を考える講義があります。

自分と異なる点が多い患者さんと話す機会がたくさんあるので、色々な物事の考え方に触れつつ最善のケアを考えたり、信頼関係を構築できるようなコミュニケーションを目指したりと、将来国際医療にかかわるうえで生きるであろう経験を積めていると感じます。

 

課外活動

医学生カンファレンスや著名な先生のご講演に土日や平日の夕方を利用して参加しようと思ったとき、ロンドンには複数医学部が集まっているのでイベントの頻度が高く内容も幅広いです。

また、複数の大学の学生団体が共同開催するイベントは、特に質が高いと感じます。

課外活動を通してほかの大学・学年の学生とたくさん交流できることも、都市部の大学に通うメリットだと思います。

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天候 

イギリスは雨が多いイメージをお持ちの方も多いと思います。

実際ロンドンでは、一日中雨が降っていることは少ないものの、ずっとどんよりしている日が特に秋~冬に多いです。

冬は日照時間も短いので、9時~17時に講義が詰まっていると日光を浴びることなく一日が過ぎてしまうことがあり、特に渡英したての冬は日光に飢えていました…!

イギリスの中でも特にウェールズでは雨の日が多いと聞くので、慣れるまではなかなか辛そうです。

 

大学の試験

きちんとした成績を修めて進級していくためには、どんな試験をパスしないといけないのか熟知する必要があります。

 

定期試験の頻度・形態

私は入学するまで知らなかったのですが、UCLの医学部では試験が年に1度しかありません。

つまり、1年間かけて勉強した範囲すべてが学年末試験の範囲となります。試験形態は、実技試験と選択式の筆記試験です。

試験の頻度や形態は大学によって様々で、例えば同じロンドン大学の傘下のインペリアル・カレッジ・ロンドンの医学部では、単元ごとに記述を含む筆記試験があり、別日に実技試験があるそうです。

範囲は広いけれど試験回数が少ない方が良いのか、常に試験に追われる状態だけれど各試験の負担が少ない方が良いのかは、完全に個人によると思います。

正直なところ、私は小さい試験が何度もある方が良かったです。笑

 

医学部卒業試験の時期

イギリスでは現在国家試験はなく、医学部卒業と同時に医師免許が付与されます。

この大学の卒業試験も大学によって実施時期が異なり、UCLのように6年生の春に行う大学もあれば、卒業の1年以上前に実施し最終学年をひたすら研修に充てる大学もあります。

 

 最後に

UCLに入学してロンドンで暮らしてみて初めて大変さに気づいたこともありましたが(日照時間の短さと学年末試験の範囲の広さ。笑)、徐々に慣れながら勉強したいことに打ち込めているので、とても充実している日々です!

 

 

救急のシミュレーション&血液ガスの採血

私は今学期のモジュールで、呼吸器内科、循環器内科、内分泌代謝内科、救急外来での実習を行っています。

先日その一環として、実践的なスキルを身に着けるために、救急のシミュレーションと血液ガス分析用の採血の練習を行いました。

 

救急のシミュレーション

私の実習先の病院には、Simulation centreといって救急外来の様子を再現できる研修施設があります。

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患者さんのマネキン、先生が操作できるバイタルのモニター、実際に現場でも使われている医療器具、除細動器(心室細動による心停止の際に電気ショックを与える機械)などが用意されています。

また、別室にいる先生の声がアナウンスとして聞こえる仕組みになっています。

最初患者さんの容体が安定している時は、患者さんに扮した先生から主訴や症状の詳細を聞き出し、そして容体が急変して私たちだけでは対処できなくなった場合には、専門医に扮した先生に電話越しで状況を伝え指示を仰ぎます。

 

ABCDE assessment

これは、初めて患者さんを診る場合に必ず行う体系的な診察のことです。

救急外来というストレスフルな状況でも、緊急性の高い症状を見落とすことがないように、以下の順番に確認していきます。

  • A: airway =気道閉塞
  • B: breathing = 呼吸器系
  • C: cardiac/circulation = 循環器系
  • D: disability = 意識障害
  • E: exposure = 全身の変化(出血、発疹、浮腫など)

それぞれのセクションにおいて、

  1. 目で見て、手で感じて(触診)、耳で聞いて(聴診)異常を見つけ、
  2. 心拍数や酸素飽和度といったバイタルを測り、
  3. その場で行える治療(酸素吸入、点滴など)を行い、
  4. 心電図、血液検査、X線など必要な検査の指示を出す

ことが求められています。

 

チームワーク、コミュニケーションの大切さ

このシミュレーション施設で3つほどケースを体験して感じたことは、スタッフ間でのチームワークとコミュニケーションが患者さんの予後に大きく影響するということです。

例えば、救急の現場では複数の医師や看護師が協力して治療にあたることが多いので、上記のABCDE assessmentを分担して行ったり、周りのスタッフに治療や検査の指示を出したりします。

このような状況では、だれが何を担当するのか名前を呼びあって確認しないと、せっかく出した指示がうまく伝わりません。

その結果、迅速に治療が行えなかったり、ベッドサイドでの検査が遅れて患者さんの状態を正確に確認できなかったりします。

また、専門医の先生に指示を仰ぐ場合、患者さんにまつわる必要な状況を簡潔に伝え、分からない点を明確に質問する必要があります。

  • S: situation(患者さんの年齢、性別、主訴、病院内での場所)
  • B: background(詳しい状況、病歴)
  • A: assessment(バイタルの状況、簡単な診察の結果、既に行った処置)
  • R: recommendation(これからの対応についての私の考え、質問)

という順番で伝えるようにするのですが、焦っていると頭の中で情報を取捨選択して整理することが難しいので、場数を踏んで慣れていきたいと思います。

 

血液ガスの採血の練習

ABG(Arterial blood gas:血液ガス)分析は、酸素や二酸化炭素といった血液中の気体の濃度を測り、血液のpHが酸性やアルカリ性に傾いていないか確認する検査です。

静脈からの採血はすでに練習したのですが、血液ガス分析では動脈から採血しなければいけないので、手順や使用する器具が違います。

実習先の病院にある臨床手技研究施設で、マネキンを使って練習しました。

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 ↑左下の青いポンプをリズムよく握ることで、脈拍を再現できます!血液はもちろん色水ですが、使用する器具はすべて本物です。

同級生とペアになって、

  1. 処置に関する説明を行い患者さんから同意を得て、
  2. 局所麻酔を行って、
  3. 採血をして、
  4. 使用した針を安全に処分し片づけをする

といった一連の流れを練習をします。

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 ↑Radial pulse(手首の脈拍)を確認して、今まさに針を刺そうとしているところです!

 

最後に

診察にしても臨床手技にしてもまだまだ慣れないことが多いのですが、足りないところを自覚して同じ間違いを繰り返さないようにしたり、新しい手技を積極的に練習したりして、ちょっとずつ成長出来たらなと思います!

どうしてUCLの医学部を選んだの? ④学費・学習環境

前回は、イギリスの医学部合格を目指すと決めてから、出願大学を選ぶ際に私がどのようにカリキュラムを比較したかまとめました。

大学選びでは、専攻のカリキュラム以外にも、学費や学習環境といった大学生活に大きく影響する要素も無視できません。

 

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↑雪や雨が続いていましたが、久しぶりに晴れて暖かい日でした!

 

学費

留学生の学費は高い

イギリスの大学では、どの専攻でもHome student(イギリス人)とInternational student(留学生)と2つの学費が設定されています。

Brexit前はEUの学生もHome student扱いでしたが、今秋入学の選考からEUの学生もInternational扱いになるそうです。
Home student向けの学士課程の学費は、多くの場合専攻や所属大学に関わらず一律年9250ポンド(現在のレートの日本円で約130万円)ですが、留学生の学費はHomeの学費より高く、また上昇幅も様々です。

医学部留学生の学費は特に高い

留学生枠の学費は、概して理系のコースの方が高く、その中でも医学部は各大学の中で一番学費が高く設定されていることが多いです。

また、大学間の差が大きく、例えば、

  • ケンブリッジ(おそらく一番高い):58000ポンド(約830万円)/年
  • UCL(安め):36900ポンド(約530万円)/年

と同じ医学部の留学生枠でも大きな差があります。

ちなみに、イギリスの大学が留学生向けの奨学金を用意している場合は稀なので、民間の財団や留学支援団体を探し別途応募する必要があります。

 

学習環境

医学部の場合5~6年その大学に籍を置くことになるので、学習環境は見逃せません。

留学生サポート

留学生が多く在籍している大学の方が、学習面でも生活面でも充実したサポートを受けられると思います。

UCLでは18000人以上の留学生が勉強しているからか

  • 英語の課外コース
  • 渡英する際のGP(かかりつけ医)登録やビザのサポート

が充実している印象を受けます。

また、留学生の人数が多い方が、留学生の待遇に関する意見が大学に届きやすいと思います。

例えば、現在パンデミックの影響で多くの留学生が自国からオンライン授業を受けている状況を鑑みて、授業料減免または免除を求める運動が起こっています。

(といっても、ビザの身分の留学生はPetitionと呼ばれる請願書に署名できないので、政府に働きかけることは出来ないのですが…)

周りの学生との交流

理系の学部のみを設置している大学に行くのか、多様な学部を要する総合大学に行くのかで関わる学生のグループが変わってきます。

また、日本でいう大学での部活やサークル活動に当たる「Society(ソサエティ)」の豊富さも大学によって違います。

割く時間の量もソサエティによって差が大きいので、授業スケジュールによっては参加が難しそうなものもありましたが、どのソサエティに加入しようか考えるととてもわくわくしました!

ちなみに、日本と同じようにイギリスの大学にも医学部専用のソサエティがありますが、スポーツ系だけでなく、教育系(例:外科ソサエティ、解剖学ソサエティ)やボランティア団体などもあります。

私が所属しているソサエティや課外活動についても、これから少しずつ紹介していきます!

物価

長期間その地域で生活することになるので、日々の生活費・家賃等も考慮する必要があります。

地方都市であれば(特に)家賃がロンドンの比べ物にならないくらい安いことが大きなメリットです。

 

自分に合う大学をどうやって見極めるか

欲しい人物像について、大学のパンフレットやウェブサイトに記載されていることが多いですが、

  • 大学周辺の雰囲気
  • 学生や教授陣の印象
  • 学習環境

を見定めるにはやはり実際に現地に出向くことが一番だと思います。

「百聞は一見に如かず」とはうまく言ったもので、(現在はパンデミックで難しいですが)可能ならOpen dayに参加して直感を大切にするのも良いと思います。

ちなみに、私は出願当時インドに留学していたので、面接で初めてUCLに行きました。

面接開始前の待合室で、留学生枠の他の受験生と話す機会があり、周りのレベルに終始圧倒されていました。

面接後に医学部受験生向けのキャンパスツアーに参加したところ、UCLの図書館や臨床手技練習施設の充実度、教授・学生のオープンな雰囲気に感銘を受け、「こんな大学の面接まで進めてラッキーだったな」と満足した記憶があります。笑 

今はそんな環境で実際に学べているので、本当に恵まれているなと思います。

 

初めての夜勤

以前ご報告した足の怪我が大分治り、少しずつ病院実習に復帰しています。

先日初めて夜勤実習をこなしたので、その感想を残しておきたいと思います。

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 ↑初めての夜勤のお供は、日本から持ってきた貴重なソイジョイ

 

夜勤中におこなったこと

今回の夜勤は午後8時の引継ぎから翌朝6時まででした。

その日はロンドンで雪が降っており、また私が到着した時にはXLサイズのスクラブ(写真で着ている病院内での活動着)しか残っておらずダボダボだったので 、一晩中とても寒かったです。

現在COVID-19の患者さんを主に受け入れている病棟での夜勤でした。

看護師さんと病棟管理

病棟の構造について簡単に説明を受けた後、

  • 患者さん用のパジャマやタオルの補充
  • 就寝前に飲む薬、そして翌日朝食時に飲む薬の準備

のお手伝いをしました。

処方されている薬からそれぞれの患者さんの既往歴を紐解ける点はとても興味深いのですが、まだまだ薬理学の知識が足りないなと感じます。

新しい患者さんの受け入れ準備

夜間にCOVID-19の患者さんが1名緊急治療室から病棟に移ってくるということで、受け入れの準備をお手伝いしたり、その患者さんのケアプランに関するディスカッションに参加したりしました。

例えば患者さんを受け入れる前には、病棟内での患者さんの配置を変えてベッドを入れるスペースを確保したり、服薬管理に使用するDrug chartを新しく作成したりしておく必要があります。
また、患者さんが到着したら、薬の最適な投与量を求めるためにまず体重を計り、そして医師による簡単な問診を行います。

現在私の実習先の病院では、酸素吸入を必要とするCOVID-19の患者さんに対し、

を処方しています。

この2つの投与量は体重に依りませんが、呼吸補助を必要とする患者さんに対して呼吸補助開始後24時間投与するTocilizumab(免疫抑制の効果がある関節リウマチの治療薬)は、体重に応じて投与量を調整する必要があります。

新しく病棟にやってくる患者さんは、呼吸補助を受け始める予定だったのでTocilizumabも同時に投与開始したかったのですが、COVID-19に加えて様々な既往症がありました。

そのため、持病や現在服用中の薬とTocilizumabの相互作用をすべて確認しなければいけませんでした。

処方する薬に関する情報を集めるには、まずBNF(British National Formulary:英国国民医薬品集)を参照するのですが、すべての相互作用が網羅されているわけではありません。

比較的珍しい病気を持つ患者さんにとって、Tocilizumabのように今までと違う用途で処方されるようになった薬や新しく開発された薬が安全なのかどうかという点について、薬剤師さんにその都度確認する必要があります。

ちょっと休憩

病院内に医師の休憩場所があり果物・おやつが用意されているので、そこで午前2時半過ぎに休憩しました。

毛布にくるまって紅茶を飲んで、冷え切っていた体を少し温めました。

CT画像の分析

同じ日に夜勤を行っていた研修医の先生が、様々なCOVID-19の患者さんのCT画像を見せてくださいました。

呼吸器系や循環器系の徴候がどのように画像に反映されるか、いくつか例を説明してもらいました。

 

夜勤前後の過ごし方

今回夜勤当日と翌日には、日中の実習はなかったので、ゆっくり家からオンライン授業に参加していました。

時差ボケがあまりないタイプなので、今回の夜勤もあまり対策をしなかったのですが、4時過ぎに強烈な睡魔に襲われました。笑

少し調べてみたところ、

  • 夜勤前日に早く寝て、夜勤当日午後に昼寝する
  • 夜勤前日に夜更かしをして、朝遅めに起きる

と人によって対処方法は様々なようです。

次回は、夜勤当日午後に昼寝をしてみて、夜勤がこなしやすくなるか試したいと思います。

どうしてUCLの医学部を選んだの? ③大学のカリキュラム

イギリスの大学受験では、最大5コース(そのうち医学部は最大4コース)しか出願できないので、30以上ある医学部から4つを選ばなければなりません。

 

様々なウェブサイトやオンラインで閲覧可能な大学のProspectusを活用して、情報を収集していました。 

例えば、イギリスで医学部を設置している大学をまとめた以下のページから、各大学の医学部のウェブサイトに飛べます。

www.medschools.ac.uk

自分に合った教育・学習環境を提供してくれる大学に出願したかったので、私は大学選びの際に様々な項目を比較しました。

今回は、医学部のカリキュラムにおいて私が重視していたポイントを紹介します。

 

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 ↑UCLの医学部の校舎です。低学年ではここで一日中講義を受けます。

 

医師免許取得までのカリキュラム構成

イギリスの医学部のカリキュラム構成は、大学ごとに大きく2つに分けられます。

Traditional

最初の2年間は科学理論を重視した講義を、その後3年間は病院やGPでの臨床実習を行うカリキュラムです。

座学→実習とはっきり分かれているのが特徴で、オックスフォードとケンブリッジの2大学のみで行われています。

PBL (Problem-based Learning)

少人数でのケースディスカッションやグループワークを通して医学知識や症状のマネジメント方法を身に着けるカリキュラムです。

医学部低学年から、講義や自主学習と並行して臨床実習にかなり時間を割くことが特徴です。

Integrated

上記2つの良いとこどりで、低学年では病院での実習を少し取り入れつつ主に講義や解剖を行い、高学年では臨床実習に注力しつつ講義も受けます。

BMA(イギリスの医師会)が推奨しているカリキュラムなので、UCLを含め多くの大学で採用されています。

私は、

  • 現場でアウトプットを行う前に、体系化できるまで知識をインプットしておきたい(→ある程度基礎講義と実習に分かれている方が良い)
  • 患者さんとのコミュニケーションに慣れるまでに時間がかかりそう(→低学年から少しずつ臨床経験を積みたい)

と思ったので、このカリキュラムの大学が一番自分に合っていると思いました。

 

人体解剖実習の進め方

私は小学生の時に通っていた理科実験教室で、動物や魚の解剖をすることが大好きだったので、医学部に入学できた暁には人体解剖を自分の手でやってみたいと思っていました。

カリキュラム構成として大々的に書かれていなかったのですが、詳しく大学の資料を読み込むと、

  • 学生がグループごとにご献体を担当し実際に解剖する大学
  • 教授がご献体を解剖するのを学生が見学する大学

があることが分かったので、人体解剖の経験が積める大学を選びました。

 

Intercalation(医学部中学年での1年間の理学士号)の有無

イギリスの医学部には、医学部中学年で純粋な医学から1年間離れて、医学に関連する理学士号(BSc)を取得するIntercalationという制度があります。

大学によって5年制だったり6年制だったりするのは、Intercalationを必須としている大学とそうでない大学があるためです。

私は2019/20に免疫学・感染症学・細胞病理学についての理学士号を取得したので、また今度詳しく書きたいと思います。

UCLでは、学士編入の学生以外は全員3年時にIntercalationを行うこととしているので、20種類以上のコースから興味のあるものを選べます。

例えば、UCLが強い神経科学のコース、数学・コンピュータサイエンスの医療への応用のコース、医療人類学や医療倫理のコースと様々な選択肢があります。

医師免許だけであれば5年で医学部卒業できるところ、余計に1年かかってしまいますが、

  • BSc(理学士号)を取得すれば、将来のマッチングや専門医コース出願の際に評価される
  • 学生のうちに研究に従事する機会が得られる

といった、将来キャリアプランを建てるうえでのメリットが大きいと考えました。

Intercalationが必須でない大学の場合、コースの選択肢が数少なかったり、ほかの大学に出願する必要があったりするので、私はIntercalationが必須で制度が整っている大学が良いなと思いました。

 

MBPhD(医学博士課程)進学の選択肢

MBPhDは、医学部4年次と5年次の間に3年間研究を行い、PhD(博士号)を取得するプログラムです。

出願に当たっては、イギリスの医学部に在籍しBScを持っていることが条件なので、この制度を利用し6+3=9年間かけて医学部を卒業した暁には、

  • MBBS = 医師免許
  • Intercalated BSc = 理学士号
  • MBPhD = 医学博士号

の3つを取得していることになります。

イギリスで医学系のPhDを取得する場合通常4年間かかるので、(実際4年間に延長する人も多いと聞きますが)3年間でPhDが取得できるこのコースは、研究職を目指す学生にとって非常に魅力的だと思います。

また、イギリスでPhDをする場合は(授業料を払うのではなく)手当をもらえるので、研究に集中して取り組めます。
現在この制度がある大学は多くありませんが、決して他大学に進むとこの選択肢が絶たれるわけではなく、例えばUCLに4年次で編入すればMBPhDのコースに進むことが可能です。

 

最後に

人によって重要視するポイントは違うと思いますが、調べれば調べるほど大学ごとの特色が見えてくるはずです。

私は、それぞれの大学で勉強している姿を想像することがとっても楽しかったです!